こんにちは、ドリコムAI部・デザイナーの相澤です。
ゲーム開発の現場ではデザインやアートディレクションの業務を行っていますが、現在はAI部でAI活用促進のためのチームで活動中です。

近年、AI技術は急速に進化し、様々なビジネスシーンで存在感を増しています。

『画像生成AI』というカテゴリでも「Midjourney」や「Stable Diffusion」、Adobeの「Firefly」、直近では「FLUX.1」「Seedream 4.0」「Gemini 2.5 Flash Image」(通称:Nano Banana)など、AIの進化が大きな注目を集めています。

AIの登場を「仕事が奪われる」という脅威としてとらえる声もありますが、私たちはAIを「創造性を加速させる新しいパートナー」となり得る可能性を秘めているととらえています。

今回は「AI技術」をデザイナーがどのように業務に取り入れ、効率化やクオリティアップに繋げることができるのか、その「アイデア」をご紹介したいと思います。

なぜ今、デザイナーにAIが必要なのか

デザイン制作には多くの時間や工数を必要とします。

しかし、ビジネスのスピードが加速する現代において、制作サイクルは短縮され、求められるアウトプット量や種類は増加し続けています。

また、日々の業務に追われアウトプットとインプットのバランスが取れなくなることで、「新しいビジュアルの切り口が思いつかない」「マンネリ化する」といった、0から1を生み出す際の産みの苦しみも課題の一つに挙げられるかと思います。

これらの課題を解決するため、「創造性を加速させる新しいパートナー」としてAIの活用方法を検討し、デザイナーがより創造的な業務に集中できる環境を浸透させる必要があると考えてよいでしょう。

AIは『なんでもできる魔法』ではない

AIによる画像生成の黎明期には「AIに指示すれば、完璧なデザインが一瞬で完成する」という理想のイメージが先行していたように思います。

実際には、言語化が難しい微妙なニュアンスや満たすべき要望をAIに100%正確に理解させ、「完成品」として結果を得ることは非常に困難です。

このため、AIを「最終成果物を作るツール」として使うのではなく、特性や得意・不得意を知ることが非常に重要です。

私たちはAIを実用性と制作スピードを両立させるための「手法の一つ」として位置づけ様々な情報を発信していきたいと考えております。

デザイン業務の各シーンにおけるAI活用アイデア

AIはデザインの各段階で作業をサポートしてくれる可能性を秘めているものの、実際の現場では「具体的にAI活用のイメージが湧かない」という声も多く挙がってきます。

また、 画像生成の黎明期には 「Stable Diffusion」などに触れたデザイナーから 「プロンプトが難しい」「細かい調整がしたいけどうまくいかない」などの感想も耳にしました。

現状ではチャット上でAIと会話しながら作業していく感覚に変化してきており、AIとの心の距離もだいぶ近くなった印象があります。

ここでは「Gemini 2.5 Flash Image」(通称:Nano Banana)を用いた簡単な活用アイデアをご紹介していきます。

アイデアの壁打ち・ビジュアルイメージの視覚化

具体的な指示を入力するだけで、デザインの方向性やラフイメージなど、様々なデザインの「たたき台」を高速で得ることができます。

AIに壁打ち相手になってもらったり、自身では苦手なジャンルの作業やテイストでもイメージを視覚化することが可能になり「発想の幅」を拡大することができそうです。

【例】
・コンセプトアート
・イラスト構図
・キャラクターデザイン/衣装デザイン
・アイテム/アイコン画像
・ロゴデザイン

指定する内容にもよりますが、企画資料や制作に必要な発注指示書などで必要となるグラフィックやデザインに関しては、実用レベルといっても過言ではないかと思います。

素材加工の効率化

「不要な要素の削除」「要素の一部を差し替え」「足りない部分の描き足し」など、今まではPhotoshopなどのツールを用いてデザイナーが手動で行っていた作業も、AIであれば瞬時に対応することができます。

特に「Nano Banana」では、画像編集前後で各要素の破綻が少なく、一貫性が保たれた画像の生成が可能になっているようです。

「変えたい部分以外も変わってしまう」という従来のAIの弱点が克服されつつある状況にあると考えて問題なさそうです。

バリエーション検討作業の効率化

AIに参考の画像を与えることで「ルール」や「トンマナ」を理解し、バリエーション展開作業をサポートしてもらうことが可能です。

「色違い/柄違い」「形状違い」「モチーフ違い」「テーマ違い」「アングル違い」など、具体的にどのようなバリエーション展開を行いたいのか指示を出すことで、自動で画像生成することができます。   

結局、手直しが必要なアウトプットである場合も多いものの「Nano Banana」の登場で飛躍的に精度が向上してきているため、今後さらに時間短縮につながる可能性があると考えられます。 上記にまとめた内容は「AI活用アイデア」の一部になりますが、対応する作業や求められるアウトプット内容次第でもっと様々な切り口が発見できそうです。

デザイナー自身が新しい切り口を見つけ業務を効率化することで、これまで多くの時間を割いていた作業をAIに任せ、より本質的な「思考」や「ブラッシュアップ」などのクリエイティブな業務に集中することができる日もやってくるのではないかと思います。

AIとのコミュニケーションのコツ

AIはデザイナーの意図を 100% くみ取ることはできず、常に最適解をアウトプットできるわけではありません。

しかし、AIに過度な学習や期待を強いることなく、「AIに歩み寄る」ことで、生成結果が飛躍的に向上させることは可能です。

「思ったイメージ通りの画像を生成するためにAIにどう伝えるか」を軸にして、歩み寄りのポイントやコツを簡単にまとめてみましょう。

1. 指示は「具体的」かつ「明確」にする

「素敵な画像を作って」だけでは、AIは何をどう「素敵」にすればよいのか理解できません。 NG例: 「可愛い犬」
OK例: 「夕焼けのビーチで、楽しそうに走るゴールデンレトリバー、ふわふわの毛並み、逆光、温かい光、高精細、写真のような」

何が? (被写体) → ゴールデンレトリバー どうしている? (行動) → 楽しそうに走る どんな? (形容詞) → ふわふわの毛並み、可愛い どこで? (場所・背景) → 夕焼けのビーチ どんな雰囲気? (光、色、感情) → 逆光、温かい光 どんなスタイル? (画風) → 高精細、写真のような

このように、デザイナーの脳内に浮かんでいるイメージを具体的に指示することで、生成結果の精度は向上していきます。

2. 「キーワード」でイメージを補強する

AIは言葉の情報を元に画像を生成します。
そのため、関連するキーワードを多く与えることで、AIがイメージを具体化しやすくなります。

形容詞や名詞、動詞をキーワードとして含めることで、AIは「こんな感じかな」と推測することができ、精度を向上させることができます。

【例】
「猫、毛糸玉で遊ぶ、リビングルーム、日差し、カラフル、無邪気、可愛い、やわらかい、ふわふわ、詳細、クローズアップ、写真」

3. 「スタイル」や「画風」を指定する

写真なのか、イラストなのか、水彩画なのかAIは様々なスタイルで画像を生成できます。
求めているビジュアルの方向性を最初に伝えることが重要です。

例: 写真風、イラスト風、水彩画風、特定のアーティスト風 など
例: 「宇宙を旅する猫、ネオンカラー、サイバーパンク風、デジタルアート、光沢感、高精細」

4. 不要な要素を取り除く

「〜はなしで」「〜ではない」といった、不要な要素を伝えることも、生成結果の精度向上に必要になります。

あらかじめ具体的な指示ができない場合でも、生成結果に対して不要な要素を取り除く指示ができるので、AIと対話しながらトライ&エラーで精度向上を進めることも可能です。

まとめ:AIを「新しいパートナー」として捉える

デザイナーの業務効率化を実現するためには、「AIに仕事を奪われる」と恐れるのではなく、AI「新しいパートナー」として捉える意識を持つことが必要です。

また、人間側がAIの特性を理解し、その能力を引き出すためには「「まずAIに触れてみること」「自身の業務に活かすための切り口を見つけること」が重要なります。

これらの重要な要素を補うべく、AI部では デザイナーの業務効率化のための切り口として、「デザイナーの創造性を加速させるための活用事例」も不定期で発信していければと考えております。