こんにちは、Crypto部エンジニアの山﨑です。
本記事は ドリコム Advent Calendar 2024 の24日目の記事としてお届けします。 今回は、最近取り組んでいるWeb3ゲームについて、その可能性と課題についてお話ししたいと思います。

この記事の目的

この記事の目的は、Web2ゲーム開発者にWeb3ゲームの新しい可能性を知っていただくことです。Web3技術がもたらす新しいデジタル体験は、これまでのWeb2ゲームとは異なる特徴と魅力を持っています。この記事を通じて、ゲーム開発者がWeb3技術を理解し、採用することで、より多くのWeb3ゲームが誕生し、業界全体がさらに発展することを目指しています。

1. Web3で生まれる新しいゲーム体験

ゲーム業界はこれまで、オンラインゲームやスマホゲームなど、テクノロジーの進化に伴い大きな転換点を迎えてきました。最近では、個人的にWeb3技術に大きな期待を寄せています。Web3はブロックチェーン技術を基盤としており、NFT(非代替性トークン)や仮想通貨を活用することで、これまでのWeb2ゲームとは一味違った新しいデジタル体験を可能にします。

真の所有権

Web3技術を使うと、プレイヤーはゲーム内のアイテムやキャラクターをNFTとして所有できます。NFTはブロックチェーン上に記録されているため、誰が所有しているのかがゲーム内外で証明可能です。そのため、アイテムやキャラクターが実際に自分のものだと感じられます。また、ゲームを跨いで資産を使用する可能性があり、サービス終了時に資産が消えてしまう心配もありません。この「真の所有権」はプレイヤーに新しい満足感をもたらします。

プレイヤー間の直接的な経済活動

NFTや仮想通貨を活用することで、プレイヤー同士が公式にデジタル資産を取引できるようになります。従来のゲームでは、CESA(コンピュータエンターテインメント協会)の「リアルマネートレード対策ガイドライン」に基づき、RMT(リアルマネートレード)が禁止されていました。しかし、Web3技術を採用したゲームではこの規制が適用外とされており、プレイヤーが自由に経済活動を楽しむ仕組みを提供することが可能です。

注:CESAのガイドラインは執筆時点 (2024年12月) の情報です。最新状況については、CESAの公式サイトをご確認ください。
CESA : リアルマネートレード(RMT)対策ガイドライン
CESA : ブロックチェーンゲームに関するガイドライン

2. Web3技術をWeb2の視点で理解する

Web2ゲーム開発者がWeb3ゲームの世界を理解しやすいよう、Web3技術をわかりやすく意訳して説明します。

オープンなサーバーとしてのブロックチェーン

ブロックチェーンは、世界中の多くのコンピュータが共同で管理する「みんなで使うサーバー」のようなものです。従来のWeb2では、サーバーやデータは運営企業が管理していましたが、ブロックチェーンではこの管理を世界中の多くの人々で分担します。これにより、運営企業がサービスを終了してもゲーム資産を失うことがないという特徴があります。

ユーザーIDとしてのウォレット

Web3でよく聞く「ウォレット」は、簡単に言うとユーザーIDのようなものです。Web2ではメールアドレスやアカウント名がIDの役割を果たしていましたが、Web3ではウォレットがその役割を担います。ウォレットをゲームやサービスに接続することで、ブロックチェーン上の自分のIDを示すことができます。

アイテムIDとしてのNFT

NFTは、ゲーム内アイテムやキャラクターを示す「アイテムID」のようなものです。NFTはブロックチェーン上でウォレット(ユーザーID)に紐づけられて管理されており、誰が所有しているかをいつでも確認できます。

3. 弊社のゲームでのWeb3技術活用事例

GGGGG(100人バトロワ・協力アクションゲーム)

  • ユニークな見た目のキャラクタースキンとして3000個強のNFTを発行
  • ウォレット認証を行うことでウォレットに紐づくNFTスキンを使用可能
  • スキンを使ったプレイの戦績がNFTに記録される
  • NFTを手放すとスキンも解除される
  • ゲームの優位性には影響しない
 
この仕組みは、プレイヤーがNFTを所有している間だけ特別なスキンを使えるというものです。NFTスキンはリリース前に無料配布され、多くのプレイヤーにとって手に入りやすいものでしたが、一部の人気スキンは800ドル以上で取引されました。これによって、ユーザーはゲーム内資産に対する実際の価値を感じ、自分の所有物に対してより強い愛着を持つことができました。さらに、NFT取引を通じて他のプレイヤーとの交流が増し、コミュニティが活性化するという効果も見られました。 このNFT活用方法は技術的なハードルが比較的低いため、多くの開発者にとっても導入しやすい点が特徴です。ただし、無料配布以外ではNFTを購入しないとWeb3要素を体験できないという課題も残っています。

Eternal Crypt – Wizardry BC –(パーティー編成戦略 × 放置ゲーム)

『Eternal Crypt - Wizardry BC -』は株式会社ドリコムが保有する「Wizardry(ウィザードリィ)」IPを活用し、チューリンガム株式会社と共同で開発・運営し、ZEAL NOVA DMCCがパブリッシングを行うブロックチェーンゲームです。
  • キャラクターやアイテムなど様々なゲーム内資産をNFT化
  • NFTのキャラクターやアイテムはプレイヤー間で売買可能
  • 無課金でもゲーム内でNFTを獲得する機会がある
  • NFTキャラクターを編成すると、進捗に応じて仮想通貨も獲得可能
  • NFTや仮想通貨はゲームサーバーとブロックチェーン間で持ち出し/持ち込み可能
  • ブロックチェーンとの接続に必要なウォレットはゲーム内で新規作成可能
 
GGGGGの活用例では、事前にNFTを入手し利用するための基本的な知識が必要であり、NFTを持っているユーザーのみが特別な体験を楽しめます。それに対して、こちらはブロックチェーンに触れたことのないユーザーでもゲームをプレイすることでNFTや仮想通貨を獲得できるように設計されており、より幅広いユーザーにWeb3の新しいゲーム体験を提供することが可能です。 このように多くのユーザーに間口を広げる一方で、Web2とWeb3を繋ぐ技術的なハードルは高く、独自の基盤システムを構築する必要がありました。
ブロックチェーンゲーム共通基盤について -序章-

4. 課題と今後への期待

Web3技術はゲーム業界に新たな革新をもたらす可能性を持っていますが、現在実現されている技術と理想の間にはまだいくつかの課題があります。ここでは現状と理想、そのギャップを埋めるための期待を示します。

クロスプラットフォームの相互運用性

  • 理想: NFTを活用して、異なるゲーム間でアイテムやキャラクターをシームレスに共有できる環境。
  • 現実: 現在、多くのWeb3ゲームは独自のエコシステム内に閉じており、異なるプラットフォーム間でのアイテムやキャラクターの共有には大きな壁があります。NFTはあくまでIDであり、実際の画像や3Dモデルなどのゲーム用アセットはブロックチェーン上で管理されていません。このため、相互運用性の実現がさらに難しくなっています。
  • 期待: 業界標準のプロトコルや取り組みが整うことで、ゲーム間の資産共有が現実となり、新たなゲーム体験が生まれることを期待しています。

安定した所有権の保証

  • 理想: ブロックチェーン技術により、プレイヤーがゲーム資産を永久に保有し、たとえゲームのサービスが終了してもその資産が失われないこと。
  • 現実: サービス終了時の資産移行や維持に関する課題が依然として多く、プレイヤーの資産が失われるリスクがあります。また、現在の一部のゲームでは、NFTをゲームに持ち込む際に、一度運営側に預ける必要があります。そのため、それが戻ってくるかどうか心配するプレイヤーも存在します。
  • 期待: 技術の進展と必要な法規制の整備により、サービス終了後もプレイヤーの資産が安全に保護される環境が整うことを期待しています。また、運営に依存しない形でのNFT管理技術が進展することで、プレイヤーが安心してNFTを利用できるようになることを期待しています。

権利の問題

  • 理想: プレイヤーやクリエイターがデジタル資産の完全な所有権と利用権を有すること。
  • 現実: NFTは所有権を証明する手段として機能していますが、著作権や商標権などの権利保護は依然として中央集権的な機関に依存しており、完全な権利保護が実現されていません。
  • 期待: ブロックチェーン技術が進化し、デジタル資産の権利保護に関する新しい規制や法律が整備されることで、クリエイターやプレイヤーの権利がより強固に守られることを期待しています。
 
これらの課題を克服することで、Web3技術はゲーム体験をさらに豊かにし、ゲーム業界に新たな次元を切り開くことができると信じています。ゲーム開発者とプレイヤーが共に努力し、今後のより面白いゲーム体験を創造することを楽しみにしています。

最後に

この記事を通じて、Web3ゲームに興味を持っていただけたら幸いです。 そして、ドリコムでは一緒に働くメンバーを募集しています!
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