これはドリコム Advent Calendar 2018の18日目です。
17日目はイシカワシンヤさんによる「古くて新しいモバイルグラフィックスの世界 – ディファードレンダリングとそのモバイル向けの最適化について –」でした。

【前置き】


 

まず、自己紹介的なやつです。

自分は働きつつ映画製作をしてます、村松というものです。
釣部東京という映像グループで監督・脚本やっとります。あと進行管理。

下記は所属する映像グループのリンク(サイトが工事中のため断片的な情報しかない)。
http://tsuributokyo.com/
映像作家2018にも選出されてます。めでたい。

で、今回は映画を作っているときにちょっと気付きがあったのでそのことを記事を書こうかなぁと思います。

映画作りは共同作業。

共同作業は「作るモノ」と同じくらい「作り方」が大事になってきます。

人が多くなると自主制作といえど「作り方」をちゃんとしないとだいたい下記のようになります。

過去に友達とか学校の授業で共同制作した人には心当たりがあるかたもいらっしゃるかなと。
・想定より予算が増えた。

・無駄に時間がかかった。

・そもそも意図していたクリエイティブが出来なかった。車を作ろうとしたら、船が出来たくらい違うものを生み出した。

・中々思うように進捗が生まれずに、モチベが下がり飽きた。

・思いが強すぎてぶつかり合い、メンバー感で仲が悪くなったりして最後喧嘩別れ。

上記の失敗を繰り返しまくった結果、モノ作りを共同で行う場合の基本的なお約束は2つあるなと思い始めました。

①ちゃんと始めたら完成させる。

②仲間同士で喧嘩しない、仲良くやる。

 

今回は、上記の①と②を実現させるためには自主制作といえどアジャイルっぽく作る方がいい体感が得られたのでその知見を共有しようかなと。
あと、普通にこの記事は映画製作のメイキングにもなってますので、映画好きな人は楽しいかもです。多分。

 

【制作フローはアジャイルっぽく作る】


釣部東京は、最初ウォーターフォールで作ろうとしたのですが、色々上手くいきませんでした。
メンバーは自分を入れて6人、全員の作業の進行管理とかしてたら辛過ぎたのでやめました。

下記、上手くいかなかったProblem(問題)。
①そもそもウォーターフォールで働いたことがないので管理者の自分がやりかたを把握していない。社会人歴=ドリコム歴。盲点。
②スケジュールを決めて仕様書を作ってなどとしていると、リーダー的な人間(この場合自分)のクリエイティブな時間がなくなる。雑用多すぎワロタ。
③みんなで仲良く意見をだして作品作りをしたいけど、指示ばかりしているとメンバーが指示待ち人間化してしまった。モチベの低下、悲しい。ブレストが出来ない、何それ。
④タスクを役割分担してスケジュールきっちり組んでもその通りにならない。自主制作なので、みんな仕事とかあり作業が出来ないときもある。ズルズル伸びる締め切り。

ので、アジャイルっぽい制作フローにしてなんとかしました。
下記、原因に対するTry(対策)。
①なじみのあるアジャイルで制作。

※補足:弊社のアジャイルは弊社風にカスタマイズされているので弊社風アジャイルっぽい作り方をしているが正しい。ややこしい。
②③作業者に手法は任せて、価値だけ定義。おのずと皆が自走しだし、自分は自分のクリエイティブに専念(脚本書くとか、演出とか)。

④誰でもタスクを巻き取れる状態にして、チームとして進捗が止まるのを回避。これはかなりデカイです。おススメ。

 

といいつつ、アジャイルに拘らず、下記の状態にチームがなればいいと思います。

「メンバーが自走してやってくれて、コミュニケーションコストかけずに制作可能な状態。誰かが作業できなくても誰でもタスクを巻き取れる状態」

 

【メイキング~Ojisanが出来るまで~】


 

短編映画として「Ojisan」という作品を作ったのでそのメイキングです。
※ストーリーはもっと細かく数があるのですが、全部記載すると量が膨大で流れが分かりにくくなるため省いてます。

 

Step~事前準備フェイズ~

Story「チームの制作スタイルをアジャイルっぽいスタイルに変更できる」
概要「ウォータフォールからアジャイルっぽい開発スタイルに制作スタイルを変更する。これによって、作品作りが円滑に進み、村松のヘイトが下がる」
やったこと「JIRAの導入。チームのメンバーにアジャイルを布教。」

解説

宣教師のようにアジャイル開発をチームメンバーに布教しました。よく分からなくてもとりあえずやって!という強引な方法で改宗に成功。

なお、メンバーは自分以外はウォータフォールで仕事をしています。ストーリーポイントがなんでフィボナッチ数列かとか不思議がる様が初々しかったです。

導入後のメンバーの感想は、「うわぁ、なんかベンチャーっぽい」

 

Step~企画フェイズ~

Story「釣部東京の次作の企画案を複数案確認できる」
概要「次作に制作をする作品の企画案を複数案を提案する。これによって、メンバーがより優れた企画案を選定できる状態にする」
やったこと「メンバーおのおのが企画を持ち寄り、企画総選挙」

解説

企画案は複数出たものの、結局どれにするかまではまとまらず解散。
量を重視し、企画と言えるほどの粒度になっていなかったため、全部ピントこないという悲劇。

Story「釣部東京の次作の企画案を決定できる」
概要「次作に制作をする作品の企画案を決定する。これによって、作品制作が開始出来る状態になる」
やったこと「けっこう固めた企画案(概要とあらすじ、予算とスケジュールの大枠とベンチマークの作品を決めたやつ)を村松が提示し、大反対がなければそれを作る」

解説

全員で意見を言い合って企画案を硬めていこうとしたが、2ヶ月くらいかかってもまとまらなかった汗。

ので、1人で企画を硬めることにしました。

メンバーそれぞれが作品制作で実現したいこと(これを満たせば作品作りに満足できたってなる要素)をヒアリングして、

全員のやりたいことがある程度実現されつつ、作品として実現できそうな企画を作成していきました。

メンバーも「あー、いいね」となりあっさり決定。

 

決めたことはだいたい下記です。
※詳細をもっと詰めましたが省略します。

タイトル「Ojisan」
短編映画/15min
ジャンル /SFコメディ
ログライン(一言で言える作品のあらすじ) /異次元から来たおじさんが自分の世界に帰る話
概要

作品には異次元から来たおじさんと警備員の藤川が登場します。
おじさんが自分の故郷の異次元に帰るためには、藤川の警護するビルの屋上にいなければなりません(迎えがそこに来る)。
藤川は容赦なくおじさんを屋上から追い出そうとするので、おじさんは自分が異次元から持ってきたガジェットを藤川に見せて異次元から来たことを信じてもらおうとします。
必死なおじさんと全然話を信じようとしない藤川のテンションのギャップが笑いの核となるコメディ映画です。

おじさんが藤川にみせるガジェットが今回の我々の武器。これをかっこよく作ったり仕掛けを色々用意して観客を驚かせたり笑わせたりして行きます。

クライマックスは、おじさんが自分の世界に帰る場面。ここで巨大なUFOを合成します。見せ場的にもお話的にもピークの場面です。

※企画概要はなるべくシンプルに分かりやすく書くのでこれだけ読んでも面白くなさそうですね。

 

Step~企画フェイズ②~

Story「作品のコンセプトイメージが確認出来る」
概要「作品の雰囲気をビジュアル化する。これによって、作品に関わる全員(メンバー・役者さん)の認識を合わせることが出来る」
やったこと「コンセプトイメージを作成。CGでコンセプトイメージも制作。」

解説
今回はSFなので、それっぽいイメージを制作。

上記はメンバー作。

「なんか良いカンジのやつください」であがってきた成果物。すばらしい。

細かく指示するより、自由にやってもらったほうがモチベーションとクオリティが上がる体感。

 

Story「登場人物のキャスティングが確認出来る」
概要「作品に登場する人物の配役が決定できる。これによって、脚本を宛書できる」
やったこと「オーディションを開催して、配役を決定」

解説

役者さんを募集してオーディションを開催!(東京ゲームショーの開催日)
募集サイトにて作品概要を載せて募集をしました。
2役を募集して60人くらい応募が来ました。多い。ありがたい。

全員をオーディションできないので、審査を2回に別けて書類でゴメンなさいした方も。
そして1日で20人を面接。

結果

このお二人に決定。わーい。

 

藤川役/本間 真さん

売り出し中の俳優さん、若い。お名前が同期の某企画に酷似している。

 

謎のおじさん役/大滝 明利さん
ベテラン俳優の大滝さん。普通に子供の頃観ていた某ヒーロー番組の副隊長だった方。すぎょい。
特撮好きなメンバーは皆テンションが上がったのであった。

選定理由は、キャラの組み合わせを考えたときにお二人が一番面白そうでした。
下記、面白くなりそうな予感をラフ画にしたもの。

 

Story「脚本の初稿が確認できる」
概要「そのまんま。初稿を書く」
やったこと「役者さんが決定したので、宛書しつつ初稿を執筆」
解説
そろそろ書かないとやばいとなり脚本を執筆。CGが釣部東京の強みなのでどう活かすかとか色々考えて執筆。

この脚本はあくまで叩きという位置づけ。

後続のStoryで、メンバーから提案されたギャグを入れつつさらに肉付けしていった。

最終稿まで5回ほど書き直した気がする。

渡されたギャグの謎なメモ。

 

Step~撮影準備フェイズ~

Story「ロケハンティングを行い、ロケ場所の候補を複数案確認できる」
概要「ロケ場所それぞれののステータス(立地・費用・電源の場所・録音状況など)を確認することが出来る。これによって、作品に最適なロケ地を選定できる」
やったこと「東京各所の屋上を探り歩く」

解説
地味にロケ地代の費用が一番映画製作においてかかります。

ですのので、なるべく安いところを探しました。

今回探すのは、ビルの屋上。

東京都内の屋上を撮影用にレンタルしようとすると、平均するとだいたい費用は1時間の利用で約2万円くらい。

最低利用時間が5時間とかだったりするので1日で10万が消え去ってしまいます。

今回は格安のところがあったのでそこで撮影。

ロケハンでは、撮影時の録音環境とライティングの状況を確認しました。

 

Story「作品の世界観をビジュアル化し、美術制作をする上での共通イメージが確認出来る」
概要「登場する美術(セット・小道具・衣裳・CG合成)のトンマナを決めることが出来る。これによって、各自がバラバラに作業しても制作物に統一感が生まれる」

解説

白をベースにデザインを統一することに決定。

また、作品内に登場するガジェットには謎の文字と謎のシンボルマークを刻印することに。

 

ハードオフで買ったジャンク品(白)や普通の空き缶に文字やシンボルのシールを張るだけで謎なSFガジェットにみえる感。

 

 

Story「作品内に登場するガジェットを制作するための事前準備が出来る」
概要「ガジェットを制作するための買出しをおこなう。これによってガジェットに必要な材料が全て揃う」

解説

秋葉とハードオフを巡って、材料探し。
久々にいく秋葉。

  

買い揃えたジャンク品。これがどうなるのか…。

 

Story「作品に登場するガジェットを制作することが出来る」
概要「作品に登場するガジェットを制作する。これによって撮影に必要な美術が全て揃う」

解説

買ってきたジャンク品を組み合わせ、トンマナに従って白く塗装しました。

最終的に下記のようなカンジに。白く塗装をすることでただのジャンクに統一感が出ました。すばらしい。

 

Story「作品で必要な特撮表現の撮影方法が確認出来る」
概要「作品で必要な特撮表現を検証する。これによって撮影時に何を準備し、どう撮影するかがだいたい分かる。」

解説

今回の作品はSFなので超常的なことが色々起こります。

それをどう撮影するか検討をつけていきます。

まずアナログで作るかCGで作るかを検討して、各シーンごとの具体的な撮影方法は後続のStoryで詰めました。

ちなみに、左は Cinema 4D。右は釣糸。

LINEでどうすれば気持ち悪い粘性のクリチャーが出来るかをやりとりする人々。

 

Step~撮影フェイズ~

Story「脚本の読み合わせが完了し、大まかな演技の方針を確認出来る」
概要「大まかな演技の方針について役者さんと認識のすり合わせが出来る。これによって、演技の細部をすり合わせることが可能な状態になる。」

解説
渋谷某所のレンタルスペースで読み合わせ。
ここで読み合わせをし、大まかな演技の方針を固めることが出来ました。
細部の詰めは後続のStoryにておこないます。

脚本を読んだだけでは分からない部分をホワイトボードを使って説明しました。

はたから見ると意味不明な図と文章が並んでいます。

 

Story「撮影テストをし、本番時の撮影プランをスタッフが確認出来る」
概要「スタッフは本番想定の撮影テストをおこなう。これによってスタッフは撮影の段取りを理解し、本番の撮影に向けて安心できる。」

解説
公園にてカメラテストをおこないました。

事前に用意した絵コンテを確認しつつ本番に向けて最終調整しました。

遊びに来た子供たちの視線に耐えながらテスト。

そして、11月の公園はめちゃくちゃ寒く凍えそうになりました。

 

Story「本番の撮影が出来る」
概要「本番の撮影。泣いても笑ってもコレが最後や。」

解説

作品内の時間が昼なので、日が沈むと撮影が出来なくなってしまうのでとにかくマッハで撮影。
事前に練習したこともありスムーズに撮影は出来ました。祝。
ただ、ロケ日前日に撮影しようとしていたシネマカメラがぶっ壊れたりなどトラブルが続出。
泣きそうになりながら、5年くらい前はトレンドだった5DmarkⅡで撮影。今は全てが懐かしい。

 

 

Step~ポスプロフェイズ~

めでたく撮影は終了し、ポスプロフェイズへ!

と言いつつ実はまだこの作品は完成してないという罠。

今、編集中です。

そのうちまた続きの記事を書く場があれば書きます…泣

 

 

【最後に】


アジャイル開発風に作ってみると、チームの風とおしが良くなって仲良く作れる気がします。

チームの空気感は自主制作では凄く大事なので、それだけでもやってみる価値はありそうです。

明日はJunnichi Kittaさんの「ScrumMaster奮闘記」です。