こんにちは、インフラソリューション部のひらしーです。
2025年11月に開催された「技術書典19」に、サークル「Hiracy Works」として個人で初参加しました。
頒布したのは「EKS Auto Modeで構築するn8nセルフホスト環境」という本です。
今回の記事では、その出展までの道のりや当日の様子を振り返り、「1人で技術書典に参加してみたいけど、大変かな?」と迷っている方の参考になればと思っています。

技術書典とは

技術書典は、エンジニアやクリエイターが自分の技術的な知見や経験を同人誌として頒布する、技術書に特化した即売会イベントです。技術系の同人誌即売会としては最大級の規模で、多種多様なジャンルの本が一堂に会します。
オンライン頒布とオフライン会場(リアルイベント)が組み合わさっているのも特徴で、会場で実際に読者と会話しながら本を手渡せる一方で、当日足を運べない人にも通販を通じて届けることができます。
また、個人・小規模サークルでも比較的参加しやすく、初参加でも運営のガイドやバックアップ印刷所、備品の提供などが整っているため、「一度自分の本を作ってみたい」という人にとって良いチャレンジの場になっています。

参加のきっかけ

普段の業務や個人開発で触れていた「Amazon EKS」と、その基盤上で「n8n」をセルフホストする方法について、あまり公開された情報がなかったため、本にまとめてみたいと思いました。
また、『自分が作ったモノを売るイベント』を経験してみたいという思いもあり、技術書典への参加を決めました。

執筆・制作

執筆環境

原稿作成には、技術同人で広く使われているマークアップベースの執筆ツール Re:VIEW を使いました。
また、Re:VIEW向けの書籍制作テンプレートである TechBooster/ReVIEW-Template をフォークし、紙面・ページフォーマット設定やPDF出力タスクを再利用しつつ、GitHub Actionsで原稿更新後すぐにPDF生成して確認できるようにしました。

表紙作成

表紙デザインはエンジニアが技術書を作る上での大きなハードルの一つですが、最近では有償・無償を問わず優れたツールがあり、技術書ならではのシンプルな表紙でも十分通用すると思います。
ただ、注意点としては素材やフォントの著作権・ライセンスを必ず確認すること。生成AIで画像を作る場合でも、元データの取り扱いや商用利用可否が明示されたサービスを選び、引用元がある場合は本文や奥付でクレジットを入れるなど、権利者へのリスペクトを忘れないようにしましょう。
また、「ジャケ買い」という言葉もあるように、表紙デザインは読者の購買意欲に大きく影響するため、可能であればデザイナーに依頼するのも良いでしょう。

スケジュール管理

執筆用の Re:VIEW-Template リポジトリをフォークしたのが 2025 年 7 月末で、原稿の最新コミットが 10 月中旬でした。おおよそ 2.5 ヶ月間で 98 ページを書いたことになり、結果的には「ほぼ 1 日 1 ページ」くらいのペース感でした。
進め方としては、平日・週末を問わず、基本的に毎朝 1 時間を執筆時間として確保するスタイルを取りました。実際には本の内容に関する調査・検証や、慣れない表紙デザインの調整にも時間を割いていましたが、「毎日少しずつでも手を動かす」という習慣を作れたことは、執筆を最後まで続けるうえでかなり効果的だったと感じています。

入稿・印刷

技術書典はバックアップ印刷所が充実しており、私もこちらを利用させて頂きました。
紙の本の作成は初めてだったので、トンボや塗り足しの設定、表紙のカラーモードなど、慣れない点も多かったのですが、事前に紙質や色味のサンプルを取り寄せて確認したことで、無事に入稿を完了しました。

イベント当日

当日の準備

技術書典は初参加だったのですが、かんぜん手ぶらセットというほぼ備品を用意せずに設営できるサービスがあったため、本当に助かりました。
ただ、さすがに1人での参加は厳しいと思ったため、事前に2名ほどエンジニアの仲間を誘い、交代でブースを見てもらえるように調整しました。

設営

イベントの設営は初めてでしたが、隣のブースを参考にしつつ、見よう見まねで進めました。本の陳列やサンプル、ホワイトボードに書いたキャッチコピーの配置などは、実際にお客さんの動きを見ながら、開催中も少しずつ調整していきました。

実際に自分の本を売ってみて

本の内容に興味を持ってくださった方が、真剣に質問や感想を伝えてくれるケースが多く、とても刺激になりました。
また、直接のフィードバックをもらえることで、自分の知識や経験が他の人に役立っていることを実感できました。

振り返り

準備は早いに越したことはない

印刷所への入稿が早いと割引を受けられることも多いのと、余裕を持った執筆が内容の質向上につながるため、早いに越したことはないです。
ただ、例えば生成AI関連のように、技術の進化が早い分野の場合は、内容が古くなってしまうため注意が必要です。

最後まで誰の手も借りずにできるか

自分の場合は初参加でイベント会場の雰囲気も分からなかったため、手伝ってもらいましたが、隣のブースの方は1人で参加されていました。
1人参加の場合は、昼食や休憩、他のブースを見回るタイミングが難しいため、可能ならば複数人で参加するほうが良いと思いました。

技術書典で売れる本の考察

あくまでも、個人的な考察ですが、技術書典で売れる本には以下のような特徴があると感じました。

  • ニッチ過ぎない
    • 技術書典イベントに参加する方は老若男女様々でした。感覚として新しい技術やツールに興味を持つ人が多いため、入門書的な内容が好まれると感じました。
  • 市販本との差別化:
    • 逆に個人の経験にもとづく「誰もこんなことは市販本で書かない」感が強い本は、技術書典ならではの魅力になると思いました。
  • 著者及びサークルのブランド力:
    • 継続的に良質な本を出しているサークルや、有名な著者のブースは行列ができ、売り切れも出ていました。

おわりに

技術書典は、自分の持つ技術の分野に興味を持つ多くの人々と直接交流できる貴重な機会であり、知識や経験を共有する素晴らしい場です。1つの本を作り上げる大変な面もありますが、準備をしっかり行い、周囲のサポートを得ることで、充実した経験が得られると思います。
興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください。

About the Author

ひらしー

SREエンジニア

2010年ドリコム入社。Java,PHPプログラマーを経て、社内のインフラ構築・運用を担当。群馬出身で焼きまんじゅうとモツ煮と上毛かるたをこよなく愛す。
最近の趣味は合気道やコーヒーの自宅焙煎です。