はじめに
こんにちは、 Smith (@do_low) です。
本稿はいま皆様がご覧になっている、この Tech Inside Drecom についてのご紹介です。
技術戦略上のテックブログという目線での紹介となるので、本稿がドリコムだけでなく各社のテックブログをちょっと違う目線で観測するための手立てになれば幸いです。
自社のブログメディアを持つということ
Tech Inside Drecom は技術広報のための媒体であり、ブランディングのための手段です。
会社を知ってもらう、業務内容を知ってもらう、どんな技術を扱っているか知ってもらう、イベントを宣伝する・・・これまでの記事を見ても、各記事の目的は多様に見えますが、これらは一貫してドリコムのブランディングという大目的に包括されます。
一般的に、広報活動のミッションはエンドユーザの商品に対する認知(この場合はドリコムの認知)の状態を引き上げるところにあります。
ドリコムを知らない人にはドリコムを知ってもらえるように、ドリコムを知っている人にはドリコムに興味を持ってもらえるように、という具合です。
認知の状態を引き上げるのが広報活動のおしごと
Tech Inside Drecom は、ドリコムの意図通りにドリコムという会社の技術を読み手に伝えることが主目的です。
自社開発ゲームをインストールしてもらうことや、自社サービスの価値を伝えることが目的ではありません。
結果として得られる効果は、一般的に組織力向上、採用力強化、協業創出の3つが考えられますが、 Tech Inside Drecom の戦略上では組織力向上、次いで採用力強化をターゲットに据えて活動をしています。
その背景にある問題は次の節でご説明します。
ブランディングと組織課題
ドリコムでは、全社ビジョンとして「発明を生み続ける」という文言を据えています。
それが故に、ドリコムは収益軸という意味ではゲーム事業に重きを置いているものの、事業ドメインを意識的にそこに定めているわけではありません。
これは転じて技術ドメインも定めていない状態であるとも言えます。
そして正直な所、これは技術ブランディングの観点からは(というか技術戦略的にも)非常に難易度が高いアプローチです。
ドリコム内部ではドリコム技術の認識に統一をかけることは容易ではなく、ドリコムに興味を持ってくれる方に対しても、適切にドリコムの技術についてメッセージングすることが困難となります。
あるいは某社のように C#大統一理論を提唱するなど特定技術に傾倒していれば、このブログで訴求すべき技術や読んでもらいたい読者層などもある程度絞り込むことができるはず・・・それが時には(しばしば)羨ましく思えたりもします。
2018年のプレスリリースから垣間見る難しさ (https://www.drecom.co.jp/pr/2018/)
Tech Inside Drecom のプロデューサーを交代させていただく折、そういった課題を運営メンバーの中で認識合わせし、まずはドリコムの技術について共通の認識を持ってもらうことに寄与すべきと取り決めました。
つまり、ドリコムの採用技術、技術に対するスタンス、風土・文化などを公の情報にすることによる、社内外に対してのドリコムの見え方や、どう思われたいかについての統制です。
副次的に、ドリコムの技術がどういうものかを明文化するプロセスが発生したため、これまでなんとなくぼんやり認識していたドリコムの文化や風土を、文字や言葉にできる機会が得られました。
例えば、先日公開させていただいたドリコム総選挙の記事執筆にあたっては、「なぜドリコム総選挙を継続するのか」という素朴な問いについて、「習慣だから」で片付けることなく改めて内省し、文言化のプロセスを通して多くの人に伝えられるきっかけになりました。
ドリコムの歴史においては、エンジニアの文化や風土は古くから土着的に存在していたものの、それらの明文化や意識的な継承活動を行う準備ができていないまま会社がスケールしたため、個々人の活動では埋めることが難しいカルチャーの差分がどうしても発生してしまっています。
Tech Inside Drecom は、古くより由来する文化・風土を尊重しつつも、新しくジョインしてくれたメンバーによってもたらされた良い変革も含めて成り立っているドリコムの今を明文化し、多くの人が認識できるようにするための情報媒体としてここにあります。
現在、 Tech Inside Drecom は、ドリコムの技術を以下のように捉え、発信しています。
ドリコムは、その時々のビジネス・サービスに適した技術を選択し、習熟・活用できている会社である。
つまり、「ドリコムは技術的に○○の会社である」という形容は行わない。
例えば Elixer や DApps などを要所で取り入れているが、それらそのものではなく、技術を取り入れて扱えている適応力の高さというコンテクストを強調すべきである。
ブログメディア運営
さて、ここからは実務的な部分のご紹介です。
実際に自社でテックブログを運営されていたり、これから始めようという方には、 Tech Inside Drecom の運営の風景が参考になるかもしれません。
運用体制
Tech Inside Drecom はプロジェクト化されており、予算は主に人件費が中心です。
ブログを配信するサーバ・インフラは社内共通費用として扱われているためプロジェクト予算外です。
現時点で運営メンバーは私含めて 7名、それぞれ月次で2~3人日程度の稼働で運営しています。
また、要所要所でのヘルプや記事執筆者、レビュアーなどの稼働も個別に人件費として見積もっています。
今期の予算を組んだ時のアサイン計画、数値は人月表記、AC はアドベントカレンダーのこと
週次で1時間の定例を設け、執筆中の記事ステータス確認や新規記事ネタ出し、ブログメディア改善のためのタスク出しや進捗確認などを行っています。
定例で挙げられたタスクはメンバーにアサインし、各自のタイミングでこなしてもらっています。
メンバーは主にエンジニアとデザイナーで構成されており、広報のプロフェッショナルのような存在はいません。
すべてのメンバーが何かしらのプロダクト開発を主としているため、割と、というか超忙しいです。
よくやってくれてるな。
記事ネタ
ネタや執筆者がいなくては記事を書けないため、運営メンバーは常に社内に対してアンテナを張っています。
社内ブログや登壇情報、勉強会などのイベントごとには他の従業員よりもかなり感度が高いのではないでしょうか。
直近で掲載された3本のインターン記事も、「これ記事になるんじゃないか?」というノリから公開にこぎつけたネタとなります。
6月に公開した Libra に関する記事は、ニュースに対するドリコムの所感を速報で出すなどの新しい試みをした記事でした。
また、以下のような協賛情報なども定性的に公開させていただいていますが、これらは記事本数が多いため、Tech Inside Drecom とは別のイベント協賛を取り扱うプロジェクトに記事執筆と公開の権限を大きく委譲して運用効率化を図っています。
執筆から公開まで
積極的に記事を書きたいと言ってくださる方もいますが、運営から書いていただけそうな従業員に執筆をお願いしに行くこともあります。
執筆活動に関する稼働は CTO室に付けられるため、プロダクト開発側との予算的な折り合いはつけやすくなっています。
執筆にかかる工数は2~4人日と想定し、それを超える場合は応相談です。
記事執筆の許諾をいただけた場合、運営側でキックオフの場を設けます。
アジェンダは下記のようなテンプレートを用いています。
- Tech Inside Drecom の説明
- 記事で取り扱う内容についての運営メンバー理解
- 想定読者や読了後の読者の状態定義
- IP 情報の取り扱いの有無
- 記事レビュー観点のすり合わせ
- 稼働量や予算の付け先確認
- 公開までのスケジュール決め
- 運営以外の記事レビュー者の指定 (必要なら)
このキックオフを通すことで、執筆者には Tech Inside Drecom の目的を理解していただき、運営は記事を通して読者に与えたいインパクトをイメージすることができます。
また、スケジュールまで一気に組んでしまうため、ミーティング形式で顔を合わせての場はこのキックオフのみとなります。
執筆のペースは執筆者次第ですが、時事ネタやイベント系などの鮮度が求められるネタは予め公開日遵守のウェイトが高いことをお伝えしています。
執筆者から初稿が上がったら、運営メンバーによるレビューが行われます。
レビュー観点は誤字・脱字などの基本的なものから、タイトルにこの文言を入れてほしいなどの SEO 的な観点、記事内容に Tech Inside Drecom の趣旨から逸脱している部分がないか、などが主です。
また、IP案件に関する記事を執筆する際は、版元様の確認を必要とさせていただくこともあります。
修正が必要であれば適宜依頼し、必要がなければIRPR室によるレビューに進みます。
IRPR室でのレビュー観点は、その名の通り IRPR 的にドリコムのレピュテーションを毀損する内容が記載されていないかどうかですが、滅多な内容が書かれていない限りはここで差し戻されることはありません。
広報レビューが通ったら、いよいよ公開です。
公開、SNS拡散
公開当日はお昼前の11時頃に公開作業を行います。
日本ではお昼に少しインターネットのトラフィックが盛り上がる*ため、少し前の 11時を公開時間目安としています。
*参考: 2018年のインターネット運用動向 / Internet Week 2018
公開作業後は社内チャット及びドリコムの技術情報 SNS アカウントより公開の旨を拡散します。
下記のような投稿は目にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こんなツイートしています
エンジニア向けサマージョブの参加レポート!最後はUnityエンジニアさんです!『【学生レポート】ドリコムでUnityエンジニアとして2週間インターンした話』https://t.co/lPEFbfixzU #drcm_tech #ドリコム #インターン #Unity #エンジニア #学生レポート #AROW #DRIP
— Tech Inside Drecom (@DRECOM_TECH) November 18, 2019
公開後は1週間と一ヶ月経過地点での PV/UU を計測します。
PV/UU は KPI として取り扱いますが、 Tech Inside Drecom ではまさに今期より、どのように PV/UU を伸ばしていくか、という課題に取り組んでいます。
以上が Tech Inside Drecom 運営の日々の業務です。
ある日の運営のタスクボードの様子
Tech Inside Drecom のこれから
ドリコムはこれまで CTO を擁立していませんでしたが、前期より CTO室を設けて、今期より Tech Inside Drecom も CTO室管轄になりました。
CTO室は全社技術課題解決のリードや技術戦略の立案と遂行を担いますが、 Tech Inside Drecom も技術戦略上の重要なファクターです。
何かしらを媒介してドリコムの情報をインターネット上に展開し続けなければ、ドリコムのプレゼンスを向上させることはできませんし、ドリコムが具体的にどのような技術を使い、どのような課題解決をしているのか、それをより鮮明に伝える手段としてはブログメディアは適切です。
また、様々なチームから記事を寄稿してもらうことで、ドリコムの技術がより彩り豊かであることを外部に発信できるでしょう。
・・・とは言っても、 Tech Inside Drecom はようやく運用が安定し、軌道に乗った段階です。
これからはより多くのユーザに記事をお届けし、また記事の中身もよりブラッシュアップしなければなりません。
メディアが良質か、という観点の KPI も今はまだ乏しく、 PV/UU や SNSシェア数を計測するのが手一杯で本格的な分析には至っていません。
記事内容も、ググったらヒットするような有用な情報を今後増やしていきたいと感じています。
というか目下、このアドベントカレンダーでいっぱいいっぱいだよ!
やりたいことはたくさんあるけれども、すぐに全部できない。
メディア運営のベテランがいないので常に手探り。
そんなもどかしさを抱えていますが、それもまた楽し、で運営は続いています。
結びに
年末ということもあり、個人的な Tech Inside Drecom の振り返りとして、テックブログにしてはめずらしくテックブログそのものを題材にしました。
みなさんが普段触れているエンジニアリングについて、広報するという観点で見つめ直してみてもまた面白いのではないでしょうか。
一歩下がって見てみると、自社の組織課題も見えてきたりして・・・
結びにお約束ですが、 Tech Inside Drecom では以下の SNS アカウントから情報を発信しておりますので、ぜひフォローお願いします!
- Twitter: @DRECOM_TECH
- Facebook: tech.inside.drecom
- はてなブックマーク: DRECOM_TECH
明日は 広井淳貴 さんの記事です。
ドリコムでは一緒に働くメンバーを募集しています!
募集一覧はコチラを御覧ください!